Story ストーリー

MIST 300

それは、商品企画者の気づきから始まりました。

冬、寒さが一段と厳しくなったある日、仕事を終え帰宅すると子どもたちが寝室ですやすやと眠っています。
その横では、パートナーが家族の健康を気遣って、市販の超音波加湿器でモクモクと霧を出して加湿しています。
それは、一見、心やすらぐ幸せな時間でした。

しかし、どうにも鼻につく臭いがするのです…

臭いの元を探ると、どうやら発生源は加湿器のようでした。
水を入れるタンクとその下の本体の水の状態を確認してみます。
タンクの水は新鮮でしたが、その下の本体の水が数日入れ替えられていないようでした。
そのため、この本体のプール部分がヌルヌルしていて臭いがします。

彼はすぐに加湿器を洗面所に運び、隅々まで洗ったそうです。
加湿器を洗いながら、改めて実感します。

加湿器はなんて面倒くさい道具なんだろう。

タンクとプールが存在していて、雑菌が繁殖しやすい水が触れる部分のパーツが多すぎる。
洗う必要のあるパーツを数えると8個。しかも、手が入らず、洗いにくい。。。
でも、定期的に手入れをしないときっと今晩のようなことは繰り返されるだろう、と。

「もっと洗いやすい加湿器を作ろう!」

洗いやすい加湿器

ちょうどリズムでは、パーソナルに加湿ができる「コンパクト加湿器」を開発、販売していたため、
加湿器のノウハウは溜まりつつありました。

彼は市販されている部屋用の加湿器が洗いづらく、使いにくいことを企画会議で提起すると、
多くのメンバーがうなずきました。
みな、同じ悩みを抱えていました。
ここから洗いやすい加湿器の開発が始まります。

原理原則、加湿器は「水」を空間に放出し、部屋の湿度を調節する道具です。
そのため、毎日「新鮮で清潔な水」で加湿することが最も重要です。
それは、汚れた古い水を飲みたくないのと同じです。

今までの加湿器は洗いにくく、水や湿気が触れるすべてのパーツを衛生的に保ちにくく、
「新鮮で清潔な水」で加湿することが困難でした。

企画会議の場で、洗いやすい加湿器について実現案を検討します。

そもそも、どんな加湿方式が良いのか。
一般的に、フィルターに水を浸透させ風を当てて加湿する気化式は、
部屋の湿度により加湿能力にばらつきがあると言われています。
また、水や湿気が通る全てのパーツを洗うことが困難で、衛生的に保つことが苦手です。

水を沸騰させて加湿するスチーム式は、高温のため雑菌対策としては有利です。
しかし、加湿するための熱湯や湯気でやけどをする恐れがあります。
また、大きな電気を使用するため、電気代や環境負荷が大きいと言われています。

超音波式は、超音波振動子で常温の水から霧を作り、空間に放出するため、
部屋の湿度に左右されにくく安定した加湿が可能です。
スチーム式に比べ、電気代も大幅に削減でき環境負荷が少なく済みます。
なんといっても、加湿をしている霧が見えるのが最も特徴的です。
一方で、不衛生な古い水で加湿をしてしまうと雑菌を空間に放出してしまうリスクもあります。

加湿器としては、超音波式が加湿能力が安定していて消費電力を抑えながら加湿をすることができるため、
最適解な加湿方式です。ただし、雑菌の対策が重要です。

加湿方式

タンクだけで加湿する

「そもそも、水をためるタンクと、加湿をするためのプールが別々になっていることが問題なんだ。
そのせいで、タンクだけ洗って本体を洗い忘れたり、
別々になっているので洗うパーツが多くなり、
洗いにくく結果的に不衛生になりやすいのが問題なんだ。」

「だったら、水を入れるタンクだけで加湿ができたら、洗いやすい加湿器になるのでは。」
デザイナーがホワイトボードにシンプルな水の器を描き始めました。
「それ、できたらすごいね!!」
話は一気に盛り上がります。

ここから基礎研究が始まりました。
しかし、タンクだけで加湿ができる加湿器を実現するまでには基礎研究だけで1年以上の期間を必要としました。

タンクだけで加湿ができることはもちろん、
洗わなければならない水や湿気が触れるパーツ点数も限りなく少なくする。
タンクにはどうやって電力を供給するか。
重い水をどうやって運ぶのか。
課題は山積です。

タンクが分離する構造

くつろぎの時間

タンクだけで加湿ができる加湿器の試作機を作っては検証する日々が続きます。
そんなある日、技術者から面白い提案がありました。

タンクだけで加湿ができる加湿器は、
タンク内で発生した霧にファンで発生した風をあててタンクの外に霧を出して加湿をするのですが、
ファンを停止するとタンク内に霧がとどまって、まるで雲海のように揺らめくことに気づいたのです。

この雲海にあかりを当てたら美しいのでは。

夕暮れの会議室、ろうそくのような温かい色のあかりに、タンク内で揺らめく雲海が照らされました。
その美しさに、開発メンバーは息をのみます。
静かに見つめ、ゆるやかな時間が流れていきます。

それは、まさに「くつろぎの時間」でした。

「これ、洗いやすくて、くつろぎの時間の加湿器だね~」
MIST 300のコンセプト、「洗いやすい、くつろぎの加湿器」が生まれた瞬間でした。

そもそも私たちの会社は約70年間、時計を作り続けています。
私たちに脈々と流れているDNAは、
見えない時の流れを正しく計り、
色や形、音や動きを通して時間をお知らせすることに心血を注いできました。
おそらく、大手家電メーカーではばかばかしくて考えもしないような人間らしい「情緒」を私たちは真剣に考えています。

それは、私たちが大切にしている「良い時間を過ごす」哲学の表れです。

洗いやすい、くつろぎの加湿器

こうして、タンクだけで加湿ができる「洗いやすい、くつろぎの加湿器」が誕生しました。
洗うパーツはたった3つ。

早速商品企画者の自宅にはMIST 300が設置され、
今夜も仕事を終えて自宅に帰ると「新鮮で綺麗な水」で加湿され、
加湿器から漏れる柔らかなあかりに包まれながら子どもたちがすやすやと寝ています。

それは、本当に幸せなくつろぎの時間です。

今年も乾燥する季節がやってきます。
MIST 300で快適な湿度とくつろぎの時間をお過ごしください。